上達の法則

上達の法則

久々に本の話。
どこかの雑誌で紹介されてたのを見て、先日、そのメモをたよりに探して さっそく読みました。 ほとんど一気に読みました。 お・も・し・ろ・い んです。 真面目な本なのにね。 うんうん 頷きながら。
何かを学習していって「上達する」とは どういうことか、この人は掘り下げております。 その対象がまったく多岐にわたる。 車の運転から、外国語の習得、楽器の演奏、茶道、将棋、スキー(マラソンは出てこなかったけど)などなど、必ず、共感する下りがあるのを保障します。 でいて、つまらない一般論ではありません。 易しい日本語で書かれているので読みやすいのもポイント。
上達の段階を、初級者、中級者、上級者の3段階に分けていて、その段階ごとにどんな変化が人間の知覚力 認識力に起こっているか、ということを説明しています。 非常に興味深い。 上達するということは、その人間の能力にどんな変化が起こっているから起きるのか。その変化が、その人の感覚が格段に研ぎ澄まされていくことにつながるのだ。 なんとか、そのよーなことが書かれているのです。 が、非常に楽しく読めて 且つ面白いのですよ。

面白かったのは、著者自身の体験からのエピソードや、将棋の名人が3人集まっての会談で、3人の意見が一致してしまうというエピソードだ。 ひとつの芸に通じる人間はある感性までも通じてしまうのか…というような話。また、「趣味でやっている茶道の所作を理解した事が、仕事や他の場面で役立った」 など、ある物事を高いレベルで理解すると、他の分野の事柄を深く理解し得ることにつながる、という話である。


この方は、何かを学び上達していこうとする人を(絶対に)応援している。 また、ひとつの道を極めて上級者になった人は、別のことを習い始めても上級者に達する道を知っているようなものだと、書いているのもなんだか納得。
そして何より素敵なのは、この本に 「学ぶことは楽しい!」という著者のメッセージが 溢れにあふれていることだ。 どの道であっても とことん深めて上達していくのは本当に楽しい!と、この本のすべてのページの行間に書いてある気がする。そんな読後感。

で思い出した、以前に NEWSWEEK で読んだ記事、アメリカで行なわれた「貴方は今何がいちばんしたいですか?」というアンケート。 その結果は、ダントツで 「新しいことを学びたい、習いたい」という知的欲求であった。 (性欲をも上回って!とアメリカ誌らしく断わりがあった。 注:クラシカルな 人間の三大欲求は食欲、性欲、睡眠欲) 急速に変わり行くこの21世紀の社会で、新しいことを学びたいと強烈に欲することは、老い若いに関わらず稀ではありえない。 そんな私たちに ストレスではなく、喜びを与えてくれる、そんな本かもしれない。