数学的にありえない

数学的にありえない by アダム・ファウアー  ★★★★☆
数学的にありえない 上タイトルが気になって 手にしました。 読み始めたら 一気に読んでしまいました。 面白い。 極上のノンストップ・サスペンスです。 マイケル・クライトンダン・ブラウンを読んでいる人にお薦めかな。
(上下巻/ 2006 文藝春秋


最先端の研究の為に密かに人体実験をしている大学教授。 天才的な暗算能力と、確率論の知識を持つ ギャンブル中毒の数学者 ケイン。 ロシア系アメリカ人で3カ国語を話す、CIAの 暗殺者 ヴァナー。 この別々の3人が、教授のうさん臭い研究の為に 引き寄せられて始まるサスペンス。 事故。秘密。策略。駆け引き。 研究の継続の為には手段を選ばない教授。 裏側の金欲にまみれた人間関係。 そして 研究内容を盗もうとするスパイ。 迫りくる危険と緊迫感につかまって 読み始めたら止まれません。


そして ストーリーの要所要所に散りばめてある、量子力学や確率論、統計学などの難解な専門知識が もうひとつの醍醐味です。 科学的論理に理詰めで 巻き込まれていく快感。 確率論と統計学の違いについてのくだりを私は楽しみました。 ある分野に博識な登場人物を使い、その専門知識を駆使させてミステリを追っていく手法は、マイケル・クライトンダン・ブラウン に続くものだと思います。 アダム・ファウアーの初めての著作にして、第1回世界スリラー作家クラブ新人賞受賞作品。

やられたなと思うと同時に、「 天才と狂人は紙一重 」 という言葉が浮かんできました。 極上のMADな1冊です。