読書日記

[現代訳]職業としての学問

[現代訳]職業としての学問

面白かった。★★★★★ 学生時代に読みたかった。^^;
今、出版界は古典のブームで、現代語訳・新訳がたくさん出ている。恩恵に預りました。
価値観が混沌としている現代だからこそ、読むべき本なのかもしれない。示唆に富んだウェーバーの言葉に、気持よさを感じる。(スムーズな翻訳のお陰だろう) ある意味、倫理観の危機に迷う現代を100年前に見通していたことに驚かされる。答えを押し付けたりしない彼の論調にも好感がもてる。
この本の第二部がいい(翻訳者の対談なのだが) 。 この第二部で 難解なウェーバーを少しだけ楽に読める気分になる。ウェーバー初心者にも非常に優しい(易しい)。おすすめです。



最後の授業――心をみる人たちへ

最後の授業――心をみる人たちへ

心理学の講義。★★★★★ 北山修教授の九州大学での最後の講義。
<第一部>大学の講義をそのまま本にしたその形から面白い。講義の空気感が伝わってくる。講師が喋り通しという昔ながらの大学講義の形そのままだが、私には興味深かった。北山の心理学に対する謙虚な姿は好感が持てる。患者の些細な心理的変化を見落とさず、多数の語彙から適切な言葉を選び、使い分けることが必要なカウンセリングという専門職への真摯な基本姿勢があらゆる箇所に感じられた。
第二部 <私>の精神分析が更に面白い。日本人特有の心理のルーツを日本の伝承民話に求めていった北山修の「こだわりの研究」が紹介・説明される。「鶴の恩がえし」などの日本の民話や古事記の中に日本人の心を探していく長い研究の旅で、著者は なんと西洋の精神分析と重なる場所にも行き着く。この様な研究は初めて読んだ。
日本人特有の心理分析としては、土居健郎の「甘えの構造」の盲点も指摘する。 ただ問題提起で終わらず、繰り返される「罪悪感」から逃れられる道を、臨床心理療法の有効性に結び付けて示唆している点で、北山修が非常に優れた探究者であり、優れた治療者であっただろうと思われる。