フルマラソン完走!

渡良瀬遊水地のフルマラソン、初参戦。 初フルだったんですけど、完走しました。 給水とストレッチをしたとき以外は歩かずに走り続けて、なんとかねばってゴール。 まさか走りきれるとは思ってもみなかったので、言葉では書ききれない驚きです。 今年の一大事件になりました。 なんだか、夢みたい。信じられない。 どうしよう!


といっても、タイムは5時間48分だから、後半 かなり歩いた人と同じようなゴールタイムですけれど、今日の自分はまるで別人だった・・・そんな気がします。 どうしてあんなにがんばれたのか。 ハーフでヘロヘロになりながら、どうして もう半分の21km走れたのか、不思議です。 辛かったとか、苦しかったというよりも、ものすごーい不安との闘いでした。ずっとずっと続く道。 先週初めてのハーフをヘトヘトになって走ったけど。 21km以降の2周目はまったくの未知の距離で、本当に本当に不安だった。


自分がどこまでいけるかいってみます! とblogには書きましたが、ランナーズの記事に 「30km以降で、ペースダウン」 とか、「30km以降は足が全くあがらなくなり…」 とか、よく書いてあるじゃないですか。 トレーニングを積んでいる人でも、30kmという距離に悩まされたりするのだから…。 私なんて。
今回は、20km地点から、ずっと腹痛に苦しみました。 これはレースで初めての経験。 30km地点まで行ったら、今度は自分の身体に何が起こるのだろうと考えて、とてつもなく不安になったりしました。 そういう思考は打ち消す。 とりあえず30kmまで行こう、と思う。 だって、中間地点以降は、1歩1歩が、自己最長記録を更新しているんだから! すごいすごい!と自分に言い聞かせる。


掲示板に、弱気なことを書いたら、みんなが応援カキコをしてくれた。 嬉しかったな。それを思い出してちょっとがんばる。 そのなかに、「30kmまでは歩くくらいのつもりのペースでも大丈夫。 … 早めにペースを上げたりすると、後半 急に足が重くなって動かなくなるので、ご注意を」 と書いてくださった方がいた。 ゆっくり走って、とにかく 30kmまで行ければ。 瀬古選手が言った「30kmまでのウォーミングアップ」を終えたことになります。 それで充分です。(笑)


お腹が痛いので、どうしてもペースが落ちます。 2周目、ちょっと辛いんだけど、フォームに気をつけて走っていました。 過去の大会で、時間だけを気にして走ったら、後半 股関節が痛くなって泣いた大会がありました。 痛くなってしまってからは、ストレッチしても効果はなかったから。 疲れたからと なんとなく適当にフラフラ走っていると、6,7km後に股関節に来るというのは練習でも経験しました。 フォームを意識して ゆーっくりと、10歩20歩 走ってみる。 お腹をまっすぐに前に向けて、足をまっすぐ前へ出す。 イメージは 「谷川真理(爆) フォームを意識して足を出すと、足が着地する時の感じが、安定した感触で伝わってくる。 それも長くは続かないんだけどね。 フラっと来たら、谷川真理になって30歩。 そんなことを数回したように思う。(気力のある間だけ)


食べ物がない! 24km地点付近の給水所で、ショッキングなことを聞いた。 今日の大会では、補給食が最後までないというのだ。 あるのは飴とチョコだけ。 しかし2周目のこのエイドでは、既にチョコはなくなって飴だけになっていた…。 フルマラソンは大抵食べ物が置いてあるという。 昨年のこの大会でも食べ物はあったと聞いた。 燃料補給を すっかり宛てにしてきていたので (というか楽しみにしていたので) 大ショックだ。 ポカリを口に含んで走り出す。 私は 先週のハーフの空腹感に懲りたので、チョコレートと飴を少し持ってきていた。 それがとても貴重なものに思えてきた。 お腹が痛くて食べたくなかったが、チョコを2つ口に入れる。 去年の渡良瀬の話をしていた隣の女性ランナーに、チョコを2つあげた。 彼女は、「ありがとう。 もう少し後まで取っておくわ」 と大事そうにチョコをしまう。 しばらく一緒に走った。


28km地点は土手の上でした。気持ちが良くて、景色を見回しながら走ります。 今日、渡良瀬に来て本当によかったな、と既に思っていた。 目標にしていた中間点はとっくに走リ過ぎたので、次は30kmを目指していたんだけど、もうすぐ辿りつけそう。 ぺースはゆっくりにしても、既に息は荒くなってます。 でも、気持ちよーくそのままトコトコ走っていけた。 ここらへんはよく覚えている。 どうしてかというと周囲がみんな歩いているのが印象的だったからだ。 若い男の子が目立つ。 20代くらいがいちばん多い。 前半を飛ばしちゃった軍団だろう。 後方集団は後半ずーっと歩いている そんな情けないものなのだ。 その中をひとり、トコトコ走っていく。 私の前方で走っている人は1人だけ。 200mくらい先を走っているランナーで、蛍光オレンジのTシャツ。 目立つ。 時々前を確認する。近くもならないが 遠くもならない。自分と同じ苦しさで走っていると勝手に想像する。 あの人は同志だ。 来年くる時までには、蛍光オレンジの Tシャツを是非手に入れないとなぁ。 そんなコトを考えた自分が、可笑しくて 吹き出して笑った。


30km地点通過。その後土手を降りて給水。 ストレッチをする。 足はコチコチだが膝はまだ大丈夫。 すねが疲労にまみれているので心配。 でもゆっくりなら行けそう。 障害になる激痛はない。 それにしてもお腹がまだ痛い。でも、走るエネルギーはスカスカになってきた。 チョコを2つ食べるが、全く美味しくない。 飴をひとつ口に入れてスタート。
ちょっと走って、後ろを振り向く。 あれ? どうしてなのか、みんな、まだ歩いている。 おかしいな。 残り10km辺りから 皆んな走り出すのではないかと思っていたんだけど、まだ先なのかな。 (彼らは若さに溢れている) 友だちと楽しく話しながら歩いている、そんな2人組、3人組が目に付いた。 でも、きっとこの後に抜かされるんだろうな。 と思って小さく走り出す。


ここから2kmくらいは、見通しの悪い、気分が晴れない道になった。 こういうのは苦手みたい。 倍の長さに感じた。 気持ちも下向きになっていった。 段々と孤独との闘いになる。 まだまだゴールは遠いな。あと1時間30分は充分にかかる。 32kmの手前あたりで、しゃがみこんで動かない男の子がいた。 声がかけられなかった。10分後の自分に激痛が走り、へたり込む図が浮かんだ。 また不安になる。 残りの距離を 独りで走り通すことができるだろうか。 気が遠くなる。 心細い。 涙があふれてきた。


10月に、夢舞いマラソンのボランティアをしたのは、37km地点だった。 その後、しんがり隊とゴールまでジョグしながら、最終ランナー?の男の子と女の子 に「がんばりましょうね」 と声をかけた。 先輩ランナーの I さんは、「もう頑張れるだけ、がんばっているから、『がんばってね』って声かけるのも、酷な気がするんだよね」 と言って、「あと5kmですからね」、「ゆっくり行きましょうね」 と言葉を選ばれていた。 レース後半の応援は嬉しい。 苦しいときに人からもらう言葉は、1杯の水よりも嬉しい時がある。 みんな苦しいのだ。歩いている人を追い抜くたびに、複雑な気持ちになる。 下手な言葉はかけられないと思ったのだ。 ひとり黙々と走っていくと、また孤独感に襲われてきた。 私自身は、今だれかに 「がんばれ」 と言って欲しい。 誰かに話しかけてほしい。 とてつもなく心細い。
それを払拭するために楽しいことを考えようとするが何も浮かばない。 ゴールはまだ遠く、自分は苦しいし、泣きたい気持ちを抑えていくのも限界があるような気がしてきた。この1歩1歩はとてつもなく小さい。


友達の顔を思い浮かべる。 高校時代の友人。 お姉ちゃん。 姉ちゃん家の楽しいガキ3人組。 Austin時代の友人。 ルームメイトのヴァレリー。 ジェニファー、ナタリー。 ナタリーのケンカ友だちのマーガレット。 毒舌のマーガレットと笑いながら走った、5kmのファン・ラン。 笑いながら走った初めての記憶が蘇ってきた。(あはは、懐かしいや) TMCで出会った楽しい人たち。 あの人たちに もう一度会えないだろうか? ダンス・カンパニーの連中はどうしているだろう? JUNちゃんの店のラーメンをまた食べに行かなきゃなー。 来週、横浜に遊びに行く約束はどうしようかな。(思考は飛びまくる) そして、遠いゴールを想う。 もう走り終えている筈の、今朝 会ったランニングの仲間の顔が浮かんできた。 いつも親切な I さん。 I さんの友だちの S さん。 今日の日を緊張して迎えた T さん。 初めて会ったパワフルな女性ランナー S さん。 みんなこの道を行ったはずだ。 みんな、補給食がなく エネルギー切れに苦しみながら走ったはずだ。 ここで苦しんでいるのは自分だけではない。 早くゴールに帰りたくなった。


土手にもう一度上った。 上る時の坂道がさっきより辛い。 ここも省エネ走りで、ゆっくり走って上る。 みなさんは 歩いているんだけど。 ゆっくりなら登れるものだ。 別に頑張っているわけではない。 走れるところまでは走ろうと決めていたので、歩いてしまおうとか、歩きたいとかは一度も思わなかった。 (このねばりは、最後尾ギリギリランナーの私特有のものなのかもしれないと 今は思う) 34km地点。 あと8kmだ。 土手の上は景観がいいので、気分よく走れる。 広大な景色が大好きだ。 先日の台風と地震の被害で、今日開催中止になった大会がある。 それを考えたら、渡良瀬の大会を予定通り走れて、しあわせだなぁ。 感謝しなくっちゃ。 神さまありがとう。


ゴールまで行かなければならない理由は山ほどある。 まず、制限時間が7時間の関東の大会は、渡良瀬と荒川しかない。 荒川は他の行事で出られない私。 渡良瀬が参加できる唯一のフルマラソンなのである。 だからといって、来年 渡良瀬にまた来られるのか、それは分からないじゃない。 1年は長いから。 来年の約束はできない。 だから今日は行ける所まで行きたいなぁ、と思う。 それから、今年は、申し込んだレースはすべて参加してきたのだが、全部が雨や悪天候ばっかりだった。 雨の中、泥んこ道を走った記憶が蘇ってきた。 それに比べたら、最高にも感じる今日の天候、まだ走れるのに 歩いてしまうなんて考えられない。 日差しはもう暑くないし、感じる風がひんやり気持ちがいい。 「走りなさい」 と空がニコニコと教えてくれている。 こんないい条件の大会は、そんなにないのではないかとさえ、思えてくる。 (補給食がなかったのは痛かったけど) 雄大な大地をみながら、いい日だなぁ、今日この場所にいて しあわせだと思う。 この楽しみもあと8kmしかない。 この苦しさもあと8kmで終わる。 このままゴールまで走り続けていけるかも、そう思い始めていた。


あいかわらず 周囲は歩いている。 若い男の子が圧倒的に多い。 どうして走らないんだろう。 もったいない。 2周目の前半は、気の毒だと思いながら追い抜いたが、考えが変わってきた。 ねぇ〜みんな。どーして走らないの? 追い抜くたびに、そう思う。 若くて体力がありそうだし、この野球部系。 この大学生?も。 どうしてどうして歩いているの? 息もハァハァしてないじゃない。 ずっと後ろからお姉さんは来たんだよ。 まだまだ歩いてゴールを目指すの? やっぱり、走ろうよ。 もったいないから走ろうよ。 走ろう、走ろう、走ろうよ!


3人組の男の子達に 声をかけてみた。
「ねぇ、走んないのー? ゆっくりでもいいから走ろうよ。」
3人が ちょっと顔を見あわす感じで、照れ笑いしながら
「つかれましたー。がんばってくださーい。(笑顔)」
そうきたか…。逆に応援されてしもうた。 大失敗。 またしばらくトコトコ行く。 また1人追い抜く。 声がかけられない。 でも (どうして走らないの?) って想いが大きくなっていく。 こんなに気持ちがいいのにィ。 私は、やっぱり走りにきたんだよ。ゆっくりでも速くても関係ない。 絶対に 歩きに来たのではなくて、走りに来たんだ。 みんなもそうじゃないの? ねぇ。
また1人に追いついてしまった。 20歳くらいの男の子。後姿は野球部系に見えた。
「歩いちゃってて いいんスか〜? あとちょっとしかないんだよぉ」
(えっ?) という顔をされてしまう。
「もったいないから、走ろうよぉ〜」 (ちょっとおどけて明るめに)
彼は走り出した。 私と同じくらいのゆっくりペースで。 (ふっふっふ。 やっぱり元気なんじゃない) と心の中で思う。 500mくらい一緒に走ったかな。 殆んど会話はせず。
「もう暑くないし、風も涼しくて気持ちいいよね〜」 と、言ってみた。
「いや〜、俺はもうだめっス。 あそこの給水所までかなぁ」 と、彼。 200mくらい先に次の給水所が見える。
「じゃ、給水所まで行きましょう!」


給水所で、最後のチョコレートを口に入れる。 水を一口。 ちょっとだけストレッチもしてみる。 膝も股関節もまだ大丈夫そう。 それよりも全身が疲れてきた。上半身が重い感じ。 走リはじめて、腕を回したりしてみる。 これってオヤジくさいなぁ。 トホホ。 でも、腕を回すとちょっといい感じ。 もう一度オヤジになる。 いいかもいいかも、これ いいかも。



37km地点まで来た。それから土手を降りる。 広い景色よ、さようなら。 でも、あと5kmだ。 周りに走っている人が増えてくる。 頑張らなければと思う。 ちょっと急ぎたい気持ちになる。 が、ちょっとペースアップすると、途端に苦しくなった。 ( ばかだなぁ、あたし。 ゆっくり行かなきゃ) コツコツと走る感じ。 気持ちで足を前に出す。 男性の長身のランナーに抜かされた。 その姿を見送りながら、地道に足を前に出す。 ラストスパートができるようなエネルギーは湧いてはこない。 でも気持ちは落ち着いていたように思う。 ここらへんで、歩かないでの完走を確信したから。 いつも板橋まで走っているコースは約6kmだ。 怪我した時も走れた6km。 残りの距離はそれよりも少ないのだから。



「この先が、残り2km地点ですよ〜」 と係りの人が叫んでいる。 おお! 救われた気がした。(笑) 時計を見て、びっくり仰天。 時間は覚えてないんだけど、3時ちょっと過ぎ?だったような。 「3時30分前にゴールできそう!?」 と思ったのだ。 頭が壊れたのか目がおかしいのか。 1kmを9分で走っても、2kmで18分。 あと18分くらい。 6時間以内でゴールできる! ゴールはまだ見えてこないけどね。 スタッフのおじさんが、「そのままのペースでいいからね〜」 と言ってくれた。
直線距離を走る。 このときペースが上がったのか、身体がぶれまくったのか(笑)帽子を2回も落としてしまう。拾う時に屈めないほど、足が痛い。(我ながら苦笑) ( ばか!焦るな、きりん) そこからは帽子を落とさないように気をつけて走る。(笑) 意識が前に向かうが、足がついていかない。 腕を振ってみるが、それでも足が前に出ない気がした。



ゴール前の苦しさは表現できない。 気持ちが、ゴール直前ということで 持ち直して、スパートできる人もいるのだろう。 でも実際自分で走ってみると、気力が回復しても、身体が全然付いていかないのだ。 先週のハーフもそんな感じだった。 気持ちがはやる分、身体のバテバテ度とのギャップに気付いて、愕然とするランナーもいるだろう。 ラスト・スパートしたいとこんなに強く思ったことはない。
近いはずのゴールが遠いい。 早く終わりたい。 会場が見えてきた。 橋を渡る。 ゴール会場が見えてきた。 ああ! 帰ってきた! 帰ってきた! 帰ってきた! 喜びというより、安心感があふれてくる。 だって帰ってこれるって、とても思えなかったんだもの。 FINISH ラインの下を通った。 終わった。 長ーい長い我慢の時間が終わった。 信じられないが完走してしまった。 約6時間も走り続けたということが、信じられない。 何か飲みたい。 ポカリをもらって飲んだ。 お腹に感覚が蘇った。 やっぱりまだお腹が痛かった。


荷物を持って、まず、I さん達を探す。 人数が増えて大宴会に?なっていた。 私に気付くと、「すごいじゃない! このタイムで!」 、 「スゴイ!スゴイ!」と言う声が降ってきた。 (えっ? なんで、なんで?) 先輩ランナーの皆さんは、2時間も前に帰ってきているはず…。 「もう遅いじゃん」 とか 「待ちくたびれたよ」 とか言われると思っていた。 6時間近くもかかってしまったのに、「スゴイ!」 と言ってくれた皆さん。 その気持ちが嬉しくて、言葉に詰まった。 (ああ!ありがとう)
着替えに行く元気はなく、その場にへたり込む。 お腹がすいたなぁ。 でも、まだお腹が痛いような気もする。(笑) あー、こんな我慢をしたのは初めてだったかも。 ビールが廻ってきた。 (飲んじゃって大丈夫だろうか?) この乾杯は至福の味だった。