はてしない物語

はてしない物語 By ミヒャエル・エンデ ★★★★★
ずっと気になっていて読みたかったエンデの1冊、読了です。
エンデの作品としては、先日感想をupしたばかりの「モモ」 よりも、こっちが彼の秀作(であり大作)といえるでしょう。 私の趣味としてもこちらの方が気に入りました。 内容はファンタジーそのもの。 そして、普通に物語を語る形式に加えて ひとひねり加えてあるのが、この本の名が多く語られる理由なのだと分かりました。 正統派ファンタジーであるけれども、ヒロイック・ロマンとは云いきれない。 冒険譚は完結しているのですが、「はてしなく」続く物語でありますのです。 何が「はてしない」のか、是非 本の中で見つけてください。 小学生高学年以上にお薦め。 少年の心を忘れていない すべてのファンタジー・ファンへ。


ひとこと。 今年の夏は 子供のときに読んでなかった「有名な児童書を読んでみよう月間」 に決めました。 ファンタジーを優先しております。 「はてしない物語」は4年前から、読書リストにあった1冊。 まず、最初の10ページを読んで、にんまりと微笑んでしまいました。 著者が、この本の読者は全員「大の本好き」であることを大々前提に書いているのではないか…そんな始まりなんです。(笑) 本にハマって、本を読む以外は何もしないで 丸々1日を過ごした(棒に振った)経験のある…、「物語の引力」をにメチャメチャ弱い読み手であることを想定して(いや決め付けて)書いている?…そんな雰囲気のイントロ。 「さぁ〜! いくよ、物語の世界へ!」 そんな感じで、一気に、本の世界へ ず、ず、ずーっと引きづられてゆきます。(笑) 今日は1日何もできないのかなぁ。という予感的中。(いいのか、おい!)
ですから、本が好きでない人には、お薦めいたしません。

また、ただの冒険のお話に終わらず、人間の傲慢さや、弱さを物語の中に組み込んで描き、ひとつのテーマにしている部分はエンデらしい、と言えるんだと思います。 本当に恐ろしいのは、怪物でもなく 死ぬことでもなく、傲慢な心に自分を見失うことなのでは…?
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書籍について。 是非 岩波書店のハードカバー版を手にしてください。 本の装丁がメチャメチャ凝っています。 物語中に登場する『はてしない物語』と同じ、ハードカバーであかがね色の布張りの装丁に、蛇がお互いの尻尾をくわえたアウリンの模様が表紙に入っています。 中の印字もあかがね色と緑の2色刷り。 出版者の真剣な遊び心と愛情がたくさん籠もった1冊です。
(現在は岩波少年文庫版(上下2冊)も出ていますが、そちらは簡易版。)
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【追記】
ここまで書いて、初めて気付いた(検索した)のですが、この本は1985年に創られた映画「ネバー・エンディング・ストーリー」の原作でありました。 映画だけでなくテレビのシリーズもあったようですが、私はいずれの映像もみておりません。しかし、映画の内容はいずれも原作本と内容を相違する部分が多かったらしく、映画第1作目の際には、エンデ自身が訴訟まで起こした。…というのも分かる気がします。 なんとなく、エンデの「本」のこの世界観って、ハリウッドのスクリーンでは表現しきれないだろうな、ということは映像を見なくても 想像できちゃうんだけど。 「本の良さ」と「映像の楽しみ」は、全く性質の違う娯楽だから仕方ないと思うわけです。
みなさん、本を読んでみてください。ね。